今からさかのぼること475年前。時は室町時代。
大川木工の歴史は、ここ願蓮寺から始まった!
室町時代、武将として活躍していた榎津久米之介(えのきづくめのすけ)は、大川に落ちのびて安住の地としました。その後一念発起して僧になり、天文5(1536)年に願蓮寺を創建。家臣たちも榎津久米之介に続いて仏の道に入りますが、彼らの生活のためにと当時盛んだった船大工の技術を生かして指物(さしもの)を作らせたのが、「榎津指物」の始まりとされています。
※指物…釘を使わず、板と棒、棒と棒を使い、木に穴や切りこみを入れ、指し合わせて組み合わせた家具のこと。
現存する由緒書を見せてくださったのは、ご住職の榎津泰忍(えのきづたいにん)さん。榎津久米之介から数えて、十六代目にあたる方です。「久米之介は大川木工の種をまいた方。由緒書には『工商』とありますので、木工だけではなく商いの精神も家臣たちに伝えたのでしょう。96歳で大往生を遂げるまで、人びとに勇気を与え続けました」。その後も榎津指物は広がり続け、江戸時代には「榎津箱物」が、明治時代には独特のデザインと機能をもった「榎津箪笥」が登場し、家具づくりが主流になっていったというわけです。大川にお越しになる際は、ぜひとも家具のまちの歴史に触れてみてください。 |